■朝の祈り■


珍しく目覚ましが喧しく鳴る前に目が覚めた。
「ん……」
只でさえ狭いベッドで、ネコのように体を丸く小さく寝ていた自分に気付いて、レオンは自嘲気味に笑った。

(昨日から、また独りで寝る生活に戻ったんじゃないか、レオン)

狭い狭いと文句を垂れる相手は今は遠い地で……まだ着いていないかもしれないが……任務に勤しんでいる。
うっかり窮屈にして寝ていた体を、唸り声をあげつつ大きく伸ばしてから、レオンは着ていたシャツを脱いだ。
ベッドに放ってバスルームへ向かう。

BSAAの任務参加率ダントツトップの男が稀に訪れる自分の家。
数日を共に過ごして、別れて、いつも通りの日常にポンと戻った時、何故か住み慣れている筈の自分の狭い部屋が、
とても広く感じるのは一体どういうことだろうとレオンは思う。

『今度こそ、……が……かもしれない』

ぽつりと、寝ている自分の横で小さく零された言葉を頭の中で反芻して、レオンはシャワーコックを捻った。
その言葉はここ数年、零した本人……クリスの任務参加率を大幅にアップさせた原因に絡むものだった。

不確かか、確かなのかは判らない情報に翻弄しながらクリスは、死亡と見なされた仲間を……ジル・バレンタインを探している。
彼女の墓石が建ったと聞いたが、クリスは勿論のこと、レオンもジルが死んだとは思えない。
思いたくなかった。

遙かな地で、今度こそ、彼女が見つかるだろうか?

見つかるといい。

濡れた頭を振って、レオンは真っ白なタイルをじっと見つめる。
これ以上、隠してはいるけれど明らかに疲れ果てた顔で……やりきれない表情で、自分の部屋を訪れる彼を、迎えたりしたくはない。

見つかるといい。
もう一度、そっと心の奥で呟くと、レオンは顔を上げた。

今はそう祈るしかない。
他に自分が出来る事といえば、いつも通り、合衆国エージェントとしての任務をこなす位だ。
一緒に行くことは出来ない。彼も望まないだろう。


だから。どうか。


見つかりますように。




...end...


□□□□□□あとがきもどき。□□□□□□ 2009HARUコミでの無料配布本『ぜぶらーまん』に入れた短編をそのままアップ。 久々の更新がこんなんでごめんなさい 2009.04.15 ≪back