「あぅ、うっ……!」 触手から分泌される得体の知れない液で濡らされたペニスに、容赦なく絡みつき、強く擦られる感触に情けない声が漏れた。 サラザールに向かい合うよう晒された身体を捩ってみても僅かにしか動けない。 四肢を拘束しレオンを空中へ吊す触手らが、全てを阻止していた。残されている『自由』は、声を上げる事位だ。 「はぁ、あっ……、はぁっ……や……」 息は荒くなる一方で、それと共に声も上擦ってゆく。 不安定な状態のまま吊されているせいで変な具合に内腿へ力が入ってしまい、筋肉痛に近い痛みが続いていた。 そのせいで時折、痙攣のように激しく腿が震える。目の前のバケモノの、玩具でしかない有様だ。 レオンはサラザールに悟られない様、ただ祈るしか無かった。……脚のホルスターが、どうかそのまま取れないように、と。 隙が生じるのを待つしかない。この偉そうな田舎城主が、レオンが完全に抵抗出来ないだろうと踏む時まで。 (それまで、こいつを手放すわけには……!) 一本の触手が分泌液を垂らしながら、レオンの、晒された最奥に触れた。 「ッ〜〜!!」 レオンは覚悟の証に息を呑む。今は目を瞑って顔を伏せやり過ごすしか無かった。 縋るためにすら何も掴め無い手で、ギュッと拳を作った。爪が手の平に食い込む。 ヒヒヒ、と不快な笑い声が耳を突いた。その声に応えるように、アナルに触手が無遠慮に侵入してくる。 「!……んぅうう、っ!!……ぐうぅ、ああっ!」 得体の知れない、粘る分泌液で濡れているものの、中に侵入してきた触手はよりによって、成人男子の一般的なモノよりも太く、 レオンの内側を容赦なく圧迫した。 勃起した糞野郎のペニスだったなら長さに限界はあるし、硬度も大体一定だろうからまだ耐え易かっただろう。だけど、相手はバケモノの一部だ。 無遠慮にレオンの限界、下手したら限界なんて越えた場所まで押し入ってくる上に、中で自由にうねうねと先が轟く。 「あ、あああっ!!」 余りにも強烈な刺激に、きつく瞑っていた目が開いた。同時に涙が伝う。 馬鹿みたいに過敏に反応する身体が可笑しいくらいに何度も跳ねた。 貫かれた痛みで、萎えそうだった……出来るならそのまま萎えてしまいたかったペニスも、女の指くらいに細い触手が幾重にも巻かれ、 きつく圧迫されながら扱かれ、再び無理矢理勃たされていた。 もし両手が自由であったなら、狂ったように頭をぐちゃぐちゃに掻き毟っていたに違いない。 (耐えろ、耐えろ、耐えろ……! ……耐えるんだ) まだ任務を終えていない。俺はこの先に行かなければならない。呪文のように頭の中で己に言い聞かす。 プライドとか、そういうのは関係ない。絶対に成さなければならない任務、それがまだ残っている。 この目の前のバケモノを、ぶち殺して。胸に巣くう虫を排除して。あの狂った教祖に対峙する。 アシュリーの不安そうな顔が脳裏に浮かんでは何度も拡散した。 「……っ、う、うぅ……ッ」 喘いでは思い出したように唇を噛みしめ、必死に耐えようとするレオンの姿にサラザールは笑いが止まらなかった。 このまま気絶するまで、いっそのこと死んでしまうまで触手で犯し続け嬲るのも悪くない。 思いながらも一方で、他により酷く屈辱を与える術はないか?と考える。 くだらない悪行に思考を費やすことは、童心に返ったようで楽しくて仕方が無かった。 ニタニタと笑みを浮かべレオンを見つめながら、程なくして良い案が浮かんだ。サラザールは割れた窓を見やる。 手を叩いてはしゃぎたくなった。 私の城には、こういう時に役立つ虫がいるじゃないか! …………幸い、餌の蜜もたっぷりと在る。 体内で動き回る触手が一番弱いところを集中して攻めだした。レオンは堪らず叫ぶ。自分で耳を塞ぎたい位の情けない絶叫だった。 サラザールはより嬉しそうな声を上げたが、下卑た趣味の外野など気にする余裕すら無くなりつつあった。 生き物みたいに轟く癖に、まるで男と普通にセックスしているみたいな、激しい律動をも伴う。身体の奥底に望まない鈍痛が容赦なく続いていた。 「っ、あぅ、っ……んぅ」 自身のペニスからはもうとっくに吐精していた。レオン本人の気付かない間に。 イッた事に気付く余裕が無い程、酷い蹂躙が続いていたのだった。 「ああ、ふっ、うっ……!」 ふいに、貫いている触手とは異なったもう一本が、レオンの中へ侵入した。それはサラザールの指くらいに細い触手だったが、 侵入しながら貫いていた太い触手へ絡みつくように動き始め、レオンはそのドリルのような感触に鳥肌を立てる。 狂いそうな攻めに、なんとか自我を失ってはいなかったが、それでも、狂わずとも、そろそろ意識は失いそうだった。 そんなレオンを見透かしたように、サラザールが声を掛けてくる。 「どうです?気持ちが良くて死にそうでしょう?」 死んでも良いんですよ。そう零すと、サラザールは笑った。 「でもその前に、可愛いペットに餌を与えようと思いまして」 その言葉と同時に、貫く触手から何か液がドバっと溢れたのを感じて、レオンは呻く。 「う、うぅう」 蜂蜜のような甘い香りが漂った。体内に出された液体が放つ匂いだろう。口から唾液を垂らし、喘ぎながら、レオンは思う。 イカ臭いならともかく、なんでこんな匂いがするんだろう。 ぶぶぶぶ、と羽音が聞こえた気がした。 どこかで聞いた音だ。レオンは思って、……そこで顔が強張った。 肩の傷がいっそのこと出血したままで、失血で気を失っていた方が楽だったかもしれない。 割れたガラスの隙間から羽音とともに、見たことのある虫が飛来してきたのを視界に捕らえて、レオンは反射的に身体を竦ませた。 四肢を触手で拘束されている為に僅かな動きではあったが、その緊張を読みとったサラザールが勝ち誇った笑い声を上げる。 サラザールは自分の中で誇りにしている筈の『品性』を忘れかけていた。 子供の頃に成長を止めてしまったサラザールの体と比べて、美しく鍛えられた体躯を持つアメリカのエージェントを 玩具のように手中で好き勝手に嬲っているという、夢のように楽しい時間。 散々辛酸を舐めさせられた相手であるから、より支配欲が満たされ、加虐心は更に湧き、興奮から醒める筈が無い。 飛来してきたその虫は、城の中でようやく再会できたアシュリーをレオンの目前から連れ去った、ノビスタドールだった。 「さぁ、餌に釣られて、ッハハ、可愛いペットがやってきましたよ……?どうしましょうか?」 自然と喉奥から迫り上がる自らの笑い声に邪魔されて、サラザールは少し喋り難そうにレオンに語りかける。 ぶぅん、と耳障りな羽音を響かせて、レオンの目の前に虫がやってきた。 間近で見るのも不快な見た目の、虫。 元は人間だったんですよ?と、何故か誇らしげに語るサラザールの言葉は、信じ難い。 どこからどう見ても、醜い、サイズだけは規格外の昆虫。 こんなのを目前にして喜ぶのは、昆虫マニアだけだ……!レオンはギリッと歯を食いしばり、胸中で毒を吐くと、体を捩った。 虫の前で無防備に、まるで供物のように晒された身体をどうにかしたかった。 「うぅう……、く……っ」 その間もずっと体内で触手が蹂躙し続けている。 屈辱を味わいながら中で出された甘い香りの蜜は、穴から溢れ臀部を伝っていた。 重そうな雫がポタポタと、遠い床、散乱した瓦礫へと向かって垂れていく。 ギィィ。ギィ。 ノビスタドールが鳴いた。目らしき部分に青緑色の光を灯し、レオンの内腿へ、黒く光る虫の足を絡ませる。 「ぁア、ぁッ……!」 昆虫独特の足が肌に触れただけで、吐き気と眩暈がする。 特別に虫が苦手という訳ではない。けれど、この状況では嫌悪感しか湧かなかった。 必死に藻掻いて逃れようと体を揺らす。蜘蛛の巣に引っかかった哀れな蝶のようだ、とサラザールの笑いを誘うだけでしか無かった。 「……っ、……」 何も答えず、まだ逃れようと藻掻くレオンの首に触手が巻きつく。 「いい加減……ふふっ、……そろそろ諦めたらどうですか? ほら、よく見てください」 ぐ、と力を込められ、荒くなっていた呼吸が制限された。レオンは唸り声を上げ、口を開く。 「ア、ぐッ……!ぅ……っ」 「大人しくしないと、このまま絞めますよ?」 サラザールの優勢に酔った声に、レオンは乱れた前髪の隙間から鋭い睨みを返した。 その目線を満足そうに受け止めて、サラザールは蒼白い己の唇を舐めて濡らし、言葉を続ける。 「ほら、異形の虫に成り下がった元人間に犯されるなんて愉快な事、そうそう無いでしょう? こんな姿になっても、男根が在るんですよ。 機能は種付けでは無く、餌を摂取する器官に変わってしまっていますけど……。ああ、それと、人だった頃の形状と少し違いますけどね」 ふざけるな、と心の中で吐いて、レオンは目の前の虫に視線を向けた。 ノビスタドールの腹の下の方に、足同様黒いものが見える。 少し違う? どこが少しだ。また眩暈がした。額や背中に汗が滲み出る。 確かに形は勃起した男根の面影がある、でも表皮が虫の足と変わらない……そして至る所に幾つも突起がある。まるで悪趣味なバイブだ。 ...またいつか続くかも
□□□□□□あとがきもどき。□□□□□□ ちょっと進めました。ノビスタドール。 ちんこがあるのはお約束だぜ、ストレンジャー。 2009.01.02&02.04 ≪back