※注意※ □5未プレイの方には???な話です。 □クローンネタなのでレオン本人は出ません。ていうかクリスも多分出ません。 □隊長はクリスに妄執驀進中。 □ジルの性格がいまいち想像つかないので自由にやっております。 □バッドエンド予定で途中まで。続きはまた気が向いた時に。 □気が向かなかったらそのままです。ごめんなさい。 □エロ度は低いと思うので、エロ目的の方には申し訳ない。 □それでもいいよって方のみどうぞ。「ハッ!」←隊長サンクス
闇へ、底知れぬ闇へ 「お願い、こっちに来て」 震える喉から声を絞り出し、ジルは懸命に訴えた。 なるべく相手を刺激しないように冷静な声色を作っていたつもりだったが、青年の顔は蒼白いままで、怯えるような瞳はそのままだ。 「お願い……レオン」 呼ばれても青年は反応しない。 それはそうだ。わかっていても、こう呼ぶしかジルには思いつかなかった。この青年はレオンと同じ顔、同じ体を持っていても、レオン本人では無い。 カツ。ジルはそっと一歩を踏み出した。そっと右足を踏み出したのにも関わらず、バトルスーツのヒール部分が、石の床に無駄な音を放つ。 「お願い、時間が無いの」 懸命に訴えた。投薬装置を外されたばかりの、彼女の体では、青年を無理矢理羽交い締め出来そうにない。説得しか無かった。 なによりもふたりの間には結構な距離がある。 「その扉の向こうはB.O.W.が自然繁殖していて危険なの、……お願いだからそっちへ行かないで」 色素が薄まり陶器のように白くなった手を延ばし、ジルは悲痛な目で青年を見る。 青年は長い睫毛を瞬かせる。ジルの訴えも虚しく、じわり、と後ろへ下がった。もう、境界となるドアまですぐそこだ。 (ああ。だめ、そっちへ行かないで) ここ、……『王の間』に着く前に、クリス達が多少はリッカーを殺している筈だ。けれど、きっと全部じゃない。あいつらは数が多すぎる。 青年は武器を持っていない。そちらへ行くのは危険過ぎる。 武器どころか彼は裸足だった。裸の上に、病院で手術を受ける際に患者が着るような薄い着物一枚纏っているだけだ。 彼の顔には青くなった酷い痣がある。数日前ウェスカーに殴られた痕だ。 見るからに痛ましい姿の彼を、リッカーの巣のほうへ行かすなんてことは出来ない。 しかし、彼は身を翻して駆けだしてしまった。 「レオン!!!」 ジルは叫んだ。 慌てて追おうと足を動かそうとしたが、息がまだ整ってない状態で走るには程遠い動きだった。 そして彼はドアの向こうの闇へと行ってしまう。 「ああ」ジルは嗚咽に似た失望の声を漏らす。この今の自分の状態では、そちらへ助けには行けない。 きっともう、彼に会う事は叶わないだろう。 「……ごめんなさい」 ジルは低く呟いた。 誰に対する懺悔なのか、彼女自身わからないまま。 非情にもこの先を考えてしまう自分は最低だろうか。 クリスに、……自分の代わりに彼をサポートしているシェバに、ウェスカーが投薬している薬について連絡を取らなければ…… ___________________________ 人工羊水から引き上げられ、目を覚ました青年は、自分の状況が理解出来ないまま手を引かれた。 歩く、という事を知らないまま歩いた。そもそも、まだ言葉すら知らない。 移動した先で、冷たい水を頭から浴びせられ、叫び声が出た。それが彼の産声だった。 わけのわからないまま目つきの悪い男達に充分とは云えない程度に身体を拭かれ、かさかさとした素材の服を被せられる。 そうして、生まれたばかりの彼を待つ男が居る部屋へ引きずられるようにして連れて行かれた。 「連れて来たか」 含み笑いでそう発した長身の男を、青年は黙って見上げた。金色の髪をきっちり整えた黒い服の男。勿論生まれたばかりの青年に男の正体が分かる筈も無い。 しかし、身体が震えた。何故震えるのかわからないけれど、なにかが身体の中で訴えるように、ぞわりと動いた気がした。 危険、悪い予感……、彼には例えられる言葉は無い。見つけることも出来ない。 黒い服の男が、サングラス越しに青年の周りに居た男達に一瞥をくれると、彼らは無言でその場を後にした。無機質な部屋に、青年はひとり取り残される。 「貴様で4体目だな」 立ちつくすしか無い青年の身体を上から下まで眺め、独り言のようにそう零し、ウェスカーは黒い手袋を外す。 「3体はウロボロスを植え付けた途端に死んだ。どうやら残念な事に、お前の身体には合わないようだ」 青年に対してその内容が何一つ通じていないのを知っていて、ウェスカーは言葉を続ける。 「折角、お前に植え付けてクリスにくれてやろうと思ったんだが……まぁいい。暇潰し位は出来るだろう?」 男がゆっくりと歩み寄る。そこから目線を外せないまま、青年は唾を飲んだ。 目の前に立った男の影が青年を上から覆う。小さく笑んだまま、ウェスカーはサングラスを外した。 紅い瞳が僅かな金の光を帯びて、動けないままの青年を捕らえた。 ___________________________ 『ーーーーーーー』 悲鳴だ。 ジルは仮面を着けた顔を上げた。ウェスカーが滞在している部屋からだ。 (もしかして、また) ウェスカーが4年程前に置いていたという部下から手に入れた髪や血液で、クローン生命体を生み出すテストをしていた事を思い出す。 その試験体が、よりによって、ジルの知る人物。……レオンだった。 また改良を進めたウロボロスを植え付けているのだろうか。悪趣味な元上司を内心毒づきながら、耳を澄ます。 間に合うならば助けに行ってやりたいが、胸に着けられた忌々しい投薬装置のせいでジルの行動は全て制御されている。 下唇を噛んだ。こんな程度の抵抗しか出来ない自分が情けなく、虚しく、苛立たしい。 切れた唇から血が滲み出て唾と混ざる。悔しさと共にそれを飲み込んだ。 『ーーー』 『ーーー………』 暫く悲鳴が続いたあと、それは嗚咽に変わった。 嗚咽の合間に、短い悲鳴が上がる。レオンと同じ声質だ、とジルは確信した。 一体、何をされているのかーーーーー。 助けに行くことが叶わないまま気を揉んでいると、邪魔な無線で呼ばれてしまい、ジルは再び唇を噛む。 「Roger」 抑揚のない声でエクセラの指示に応え、オートマティックの機械人形であるかのようにVZ61を片手に取り足を踏み出す。ジルはもう一度血が混ざった唾を飲んだ。 エクセラの言いなりとなっている自分が不甲斐ない。しかし、高々と自信を滲ませて笑うあの女も、いつかしっぺ返しがくるだろう。 (媚び入れられるようなヤツじゃない……あの男は) ウェスカーのパートナー気取りなのはエクセラ本人だけだ。 エクセラは信用して気付いていないが、ウェスカーはエクセラをパートナーとして見ていない。 利用するだけして、容赦なく切り捨てる。ウェスカーに慈悲というものはカケラも存在していないのだから。 ___________________________ 悲鳴を耳にしてから2日後、ジルはようやくウェスカーの滞在する部屋へ入る事が出来た。 しかし入るなり、目の前の光景に唖然とする。 「持って来たか、ジル?」 元上司の声が頭に響く。唖然としているのはジルの心だけで、彼女の仮面で隠された顔は冷静なままだ。 命令されて持ってきた予備のマグナムの弾を一式渡す。ウェスカーはそんなジルを笑った。 「ご苦労……後でVZ61の予備を受け取って置け、エクセラに用意させている」 「うぅうう、う……っ」 元は研究者の長期滞在の為に用意してあった簡素なベッドの上で、ウェスカーに押しつぶされるようにされている青年が嗚咽を漏らした。 長い足がビクビクと揺れるのを、ジルは仮面越しに眺めるしかない。 (…………っ) いつもなら幾らでも浮かび上がる、ウェスカーに対して罵る言葉は見つからなかった。 レオンと同じ姿を持つ青年が……ジルが知っているレオンよりも若干若い姿ではあるが、涙を流しながら、ただ、ただ嬲られている。 ジルの内心を読みとったのか、ウェスカーはジルに紅い眼差しを向けた。 「……知り合いに似ているか?」 「本来ならクリスをこうしてやりたい処だがな」 口端を吊り上げ笑いながら云う目の前の敵に、おぞましい、と感じるより先に、恐ろしいとジルは思った。 この男の、クリスに対する憎悪は、今までジルが思っていたよりも遙かに醜悪で、相当なものだ。 「あああああぁーーーーーーー!!!」 突然、組み敷かれていた青年が悲鳴を上げて、足を揺らした。 内心驚いたジルとは反対に、その苦痛を与えているウェスカー本人は眉一つも動かさない。 「此処を突くといつも大声を出すな……」 笑い含みに小さく零して、ウェスカーは下で髪を乱し藻掻く青年の顔に拳を一発叩き込む。濡れた音の合間に、鈍い音がジルにも聞こえた。 「ひ、ぐっ!あっ、う、……」 ウェスカーの腕に爪を立てていた青年はそこから手を放し、殴られた顔を守るよう腕をクロスして身構えた。 青年の殴られた左頬は即座に赤く痛々しく腫れ上がった。殴られた側の瞳から涙が溢れ続けている。 その瞳が、ジルを見た。 「うぅ、ぅ」 青年はそこでようやくジルに気付いたようで、クロスしていた腕を解くと彼女の方へ手を伸ばした。 「うう、うぅぅ、あ、ああぁ」 言葉を知らない彼に「助けて」と云うことは出来ない。 ゆるゆると、だけれど懸命に伸ばされたその手を取ってやることが出来ずに、ジルは見返すことしか適わない。 「ふ、下がっていいぞ。ジル」 ウェスカーの言葉に従って部屋を出ようと身体が動き出す。 命令を下しておきながら、ウェスカーは振り返りもせず「そうだ、言い忘れていた」と出ていこうとしていたジルを引き留めた。 「BSAAがアーヴィングを追って近々来るらしい……わざわざ北米支部からクリスがミッションに参加するようだぞ?」 再会が楽しみだろう、とウェスカーは付け加えた。 この糞男に、ありったけの文句を叩きつけてやりたい。ジルは頭を沸騰させながら、部屋を後にする。 (でも) 熱い憎悪に蝕まれた胸の一部が急激に冷えて、ジルを落ち着かせていく。 (クリスが、本当にクリスが来るのなら、こんな状態の自分をきっとどうにかしてくれるに違いない) 長い間、敵の手先となっている自分を。 (私には助けられる価値なんてないかもしれない。けれど、けれど) ウェスカーの企みだけはどうか。 ...もちっと続くんだけどここまでで力尽きました。気が向いたらそのうちまた続きを。
□□□□□□あとがきもどき。□□□□□□ クローンネタ大好きですみません大好物です ちょっと思いついたのでダイジェストな感じで書いていったんですがよくわからないですねほんとごめんなさ かゆ うま リッカーエンド予定。 2009.05.09 ≪back