王様気取りの坊やも今は醜い怪物で がしゃん、と背に鉄格子が当たる。 目の前の、馬鹿でかい化け物と化したサラザールを見上げ、レオンは唾を飲み込んだ。 「ここは本当に化け物ばっかりだな……!」 寄生生物の母体とやらと融合した、小さい城主は遙か頭上で、気味の悪い嗤い声を響かせている。 レオンは化け物に目線を向けたまま、マガジンが空になったハンドガンを投げ捨て、マグナムを取り出した。 (頼むぜ、お前の威力に懸かっているんだ) リロードされている事を確認して、口元にマグナムを寄せキスを落とす。 左右から太い触手が伸びてきた。 転がるようにしてそれを避け、狙いを定める。 「無駄!何処を狙おうと無駄ですよ!ミスター・ケネディ!!!」 ぎゃはははは!!、と甲高く笑い、中央高く構えるサラザールがレオンを逆撫でする。 試しに左の触手に向けて発砲してみると、確かにそれは効いていないようだった。 レオンは額に冷や汗を滲ませて、次の狙いを何処へ定めるべきか考えた。 弾は無限じゃ無い。限りがある。無駄撃ちは最小限に抑えなければ……。 中央から、側近の面影を残した触手がパックリと大口を開け、勢い良く迫ってきた。 「くっ」 再び転がるようにしてそれを避ける。避けた先の足場は崩れかけており、もう僅かなスペースしか動ける場所は無い。 そこを逃してたまるものか、と左右からまた触手がレオンに迫る。 「くそ……!!」 目の前は崩れている。だけどもうそこへしか避ける事が出来ない。 レオンは空中へ飛んだ。落下する先に瓦礫が散乱しているのが見える。 飛んだ体勢が非常に悪く、多少の打撲は覚悟した。その覚悟通り、堅いその瓦礫に、肩を思い切り打ち付けてしまう。 しかも、よりによって、利き腕の肩を。 「……ぐっ」 痛さで顔が歪む。反動の強いマグナムを使う事は暫く出来そうに無い。 打ち付けた肩を庇って、レオンは壁際へ逃げた。切ったのか、肩から出血している感触があった。 じくじくと痛みが拡がっていく。 相変わらず上からはサラザールがけたたましく吠え、レオンを煽っていた。 「ははは!どうしたのです?!アメリカの優秀なエージェントは!!」 ドゴッ!と頭上で、触手が壁を殴る音がした。 「田舎城主が。吠えるだけ吠えてろ……」 レオンは息を荒げて、吐き捨てるように呟いた。子供っぽい煽りは気にせず、チャンスを伺うしか無い。 ギギィ、と虫が鳴くような声が聞こえたような気がして、レオンはふと正面を見た。 サラザールと融合した母体の、足元と云うべきか、下の方から、プラーガが出てきていた。 「……嘘だろ」 マグナムをホルスターへ戻し、レオンは胸元のナイフを取り出した。 これ以上マグナムの無駄撃ちは出来ない。ハンドガンを捨てた今、代わりの武器はこれしか無かった。 今は利き手が使えない。最悪だ。レオンは舌打ちする。 じりじりとプラーガが迫ってきた。ちら、と正面に視線を戻すと、次のプラーガが生み出されている。 距離を一定に詰めたプラーガが、レオンに向かって飛び跳ねた。レオンは左手でナイフを振りかざす。 「……っ……!」 負傷した右肩を庇うようにナイフを振り落とし、プラーガの攻撃を避けると、レオンは梯子へ走った。 「そう、さぁ昇って来るがいい……!」 サラザールが歓喜の声を上げる。 耳障りなその声を聞き流し、レオンは口にナイフを銜え、痛む右肩を自身で励まし何とか梯子を登り切った。閉ざされた入り口へ駆け戻る。 何処で体勢を立て直せばいいのか。場所が無さ過ぎだ……!焦りだけがレオンの中で大きくなる。 戻ろうにも入り口は格子が降りて叶わない。サラザールを無視して先へ行くにも、母体と融合したサラザール自身が邪魔で進めない。 (倒すしか道は無い) 倒すしか。レオンはナイフを握る手に力を込めた。 しかし肝心のサラザールは遙か上で、ナイフではとても届かない。 どうすれば。 打開の策が見いだせないまま、触手がレオンに迫る。これでは繰り返すだけだ。しかし、避けなければ……。 結局今は避け続けるしか無い。そう身体を動かそうとした。レオンはそこで己の誤算に気付く。 痛む右肩を庇う動きが、避けるのに間に合わなかった。 太い触手は呆気なくレオンの身体を掴み上げ、空中に持ち上げると、ぎりぎり力を込める。 「あぅ……!」 身体中が軋み、悲鳴を上げる。手にしていたナイフが滑り落ちた。 あっという間にレオンの身体は、高い位置で罵声を飛ばしていた、サラザールであろう部分の目前へと持ち上げられた。 「ようこそ、ミスター・ケネディ?」 青白い身体に変化したサラザールは嬉しそうにそう云うと、自由を奪われたレオンの顎へ手を伸ばす。 「今まで貴方には散々な侮辱を貰いましたが、此処で全てお返ししましょう」 僅かに残る手の傷跡をレオンに見せつけるようにすると、サラザールは吠えた。 「さぁ、私を満足させて下さい、ミスター!」 サラザールが吠えたと同時に、母体の脇から細い触手が幾筋もレオンに向かって伸びる。 出血でクラクラしながら、レオンは唇を噛んでそれを見た。 足首と手首に幾重にも絡み、レオンの身体を無理矢理大の字に開く。 残りの触手が服の隙間から直に肌を覆っていき、レオンはその不快な感触に背筋を凍らせた。 「この、化け物……ッ」 サラザールは高い声で嘲笑う。 アサルトパンツの裾の隙間から這い上がる触手が、下着の隙間に侵入してペニスに絡みつき、レオンは声を上げた。 「うぅ……っ!」 もぞもぞと腰を動かし、逃れようとするが空中で晒されている状態では『抵抗』にすら成らない。 「……サラザール……!」 レオンはギッとサラザールを睨んだ。その視線を受け、サラザールは老人めいた顔の笑みを深くする。 「まだ始まったばかりですよ?ミスター……!さぁ、良い声で啼いて下さい」 サラザールの声に呼応するように触手が轟いた。側近の影を残す目玉の付いた巨大な触手が、レオンのすぐ脇でカパァと口を開け、舌を出す。 それがレオンの頬をベロリと舐め上げた。レオンは不快さに目を瞑り、それに耐える。 (悪趣味過ぎる……!) 敵ながら、趣味の悪さに反吐が出そうだ。レオンは頬を濡らす唾液に苛立ちを覚えた。 狭い隙間から肌を這う触手がレオンのペニスを扱き始め、思わず声が漏れた。 「あっ……ううううっ……!」 扱かれるまま、勃起し始めた自分のペニスが外へ出してくれ、とばかりに服を押し上げる。 目の前でそれを見つめるサラザールが、興奮したような雄叫びを上げた。それに反応した触手が更にレオンを追い立てる。 見せつけるように、レオンの身体がサラザールの側へ、より寄せられた。 これまでに味わった事のない屈辱を感じながら、レオンは涙を滲ませる。 自由を奪われた四肢に力が篭もり、肩の傷口からどくどくと血が流れるのを感じた。 このままでは、貧血で気を失うか、それともこの酷い羞恥で意識を失うか……。レオンは己の行く末を思う。 腕を伝って滴る血の量を見て、サラザールは唸った。 レオンと同じ結末を想像したらしく、だらりと下がっていた触手をレオンの傷口へと当てる。 その触手は治癒を主とした役回りらしく、徐々にレオンの傷口が塞がっていった。 急激な痛みの引きに、レオンは内心驚く。 (どこまでも……化け、物……だなッ……) その間も、股間は煽られ続けて濡れた音を放っていた。 「気を失われては面白味が無いですからね……、さぁ、それでは見せていただきましょうか?」 くくっと喉を鳴らして、サラザールはレオンを見下ろす。 子供のように細い指でパチンと合図を出すと、触手がレオンのバックルを外し始めた。 「貴ッ様……!……!」 ずる、と引きずり下ろされ、尻が露わにされる羞恥にレオンは怒りを抑え切れない。 ホルスターを着けている為に太股より下に剥かれる事は無かったが、それでも充分な恥曝しだ。 「文句を云う割に、随分おっ勃てているじゃないですか……?」 「ふざけた、事っを……」 細い指が、触手で煽られたレオンのペニスの先に触れる。 先走りを滲ませた先端をサラザールの指がなぞり、レオンは堪らず叫んだ。 「!……触るな!」 「くく、酷い姿だ。潔癖そうに見せかけて、ここまで淫らな人間だとは」 爪先で鈴口を引っ掻くように抉られ、レオンは背を反らせる。 「……ッ!!」 傷口から痛みが引いた今、嬲られる股間にどうしても神経が集中してしまう。レオンは再び唇を噛んだ。
□□□□□□あとがきもどき。□□□□□□ なんとなく、BOSS形態サラザール×レオン なんだか触手祭りな気分になりまして。 ここまで書いて取り敢えず満足したので、気が向いた時に続きを書けるといいなと思います。 ※続き?を09.01.02にアップしました。でもまだ終わってません。 2008.8.24 ≪back